ガードレールの向こう側

空想と現実の境界線の認識が怪しい人がなんか寝言言ったりする

『Wake Up, Girls !』について

 僕はフィクションについて述べるときにリアリティとか現実性、みたいな言葉をどこか多用している節があるので、時に僕は物語にリアリティを求めがちなひと、重視するひと、といった(ある種のネガティブな)印象を与えていそうなのだけれど、それをことさら否定はしないのだけれど、そうだとして、僕の物語に求める「リアリティ」って言葉の使い方ってたぶん誤用で、その語が指す意味は技術や観念的にどうかだとか、単にハッピーエンドでない、シリアス、シニカルな結末や内容、物語を好む、って意味では決してないのであって。ただただ「一貫して生活感のある、人間臭い、泥臭い、無駄みたいな」表現だとか描写とかが好きなだけであり。ことさらそんなリアリティなんて誤用も甚だしい語を持ち出して噛み付くことがあったとしたらそれは、目的のために些末な描写などをあえて省くことで単純化、純粋化、高効率化された記号的な表現方法とはそれがときどき相反することがある、というだけなのだ。

 人間臭い、泥臭い*1、一筋縄でいかない面倒くさい話ってのはそれがフィクションや他人事である限り、呑気に構えて面白がっていられるもので。まぁ、そういうのをニヤニヤしながら傍観するってのは我ながら決して趣味が良いとは言えないよなぁ、と思わなくもないのだけど。

 

 ――えっと、ここまで前置きが長くなりましたが。つまるとこそういうとこなんですよね。僕が『Wake Up, Girls !』を好きな理由。そうです。今回はそんな「Wake Up, Girls !」、通称「WUG!」の話です。 

 すげー面倒くさいし、ドロ臭い話なんですよ。基本的に全編通して。WUG。でも、そこが良さ。そこが面白い。そしてそれこそ、WUG!の魅力のひとつなんじゃないかなぁ、なんて僕一人で言ってみたところで、一話一話でのパッとした盛り上がりにもいまいち欠けるのは事実で。それととにかく話が暗い。全体的に暗い。なにしろアイドルがアイドルとしてそのままに観客に夢と希望を与える明るいアイドルアニメ、なんかじゃ全然ないわけで。大衆向けでない評価もやんぬるかな。

 アイドルとしての自覚にもまとまりにも欠け、アイドルデビューも、その後の活動も怪しい集団。常にメンバーの離脱、ユニット解散の危機が付きまとい。社長は運転資金持って失踪するわ、男性向エロコンテンツの如き視線は向けられるわ、ちょっとやそっと我流で努力したところで報われるわけもなく、ユニットとしての知名度もライバルらには遠く及ばず、話題になるのはスキャンダルのみ。……ここまで軽く列挙してみたつもりだったのに、劇場版とTV版全12話のうち半数近く使ってこんなエピソードが立て続けって、改めて思うが本当酷いなこの作品。この「酷い」は制作陣の「アイドル」というものに対する露悪趣味への嫌悪感、流石に俺も引くわー、って意味ですよ?

 でも、そんな苦痛な前半の長い、長~いタメを越えると。何度も挫けそうになりながらも幾多の修羅場を乗り越えた集団特有の雰囲気が形成されていくのが、実感を、説得力をもって解るようになってきます。こういうのがあの時やたら流行った例の言葉、「絆」って奴なのかな、なんて。僕が安易に口に出すと安っぽくなってしまいますが。

 ――余計なことをごちゃごちゃと書きました。この作品についての切り口*2や思うところはまだまだ色々あるのですが、とりあえず、今日のエントリにおいてはただ一言。内に抱えた矛盾とまゆしぃ*3への劣等感と意地と未熟さの感情に振り回されまいと必死に堪えるよっぴー*4のいじらしさ、まじたまんねぇですので6、7話だけは見て下さい、ここから本当の意味で面白くなるから、土下座しますからお願いだから!!

 

劇場版「Wake Up, Girls!  七人のアイドル」 初回限定版[Blu-ray+CD]

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*1:WUG!を「泥だらけのゴッツゴツのお芋ちゃん」と評しつつ見守る気になった早坂Pに案外似た心境なのかも知れません。

*2:アイドル論とアイドルにとっての幸福、という観点で感想を書かれている石田麦さんの『Wake Up, Girls !』感想が、僕の駄文なんかより余程この作品の魅力を正しく伝えていると思いますので、そちらのリンク先の文章をお薦めしたい。

*3:WUG!のメンバーのうちの一人、島田真夢の愛称

*4:WUG!のメンバーのうちの一人、七瀬佳乃の愛称